ハンディ版・序
「人間力」という言葉はこのところ、さらに広い分野に登場してきている。朝日新聞にいたってはこの間に「人間力って何」「人間力を学ぶ」と題して二度にわたって一ページの全面をさいて著名人を登場させていた。
ところがこの広まりに連れて浮き出してきたものは、この言葉によって示そうとする概念が支離滅裂なことである。一方ではそれぞれがてんでんばらばらの属人的な体験談の断片に、他方では「……人間として力強く生きていくための総合的な力」などと曖昧模糊としたものに終始していることだ。即ちそこには、「我われが有するところの『人間故の力』とは何か」というごく初歩の科学的なアプローチが微塵も見られないことである。
「人間力」とは、その汎用性とか実用性に配慮すれば、「主体性」と「創造性」だと定義すれば事足りる。
人びとのこの力が今日、誇張を恐れずに言えば、年を追うかのようにフリーズの度合いを強めていると思えてならない。私がキャンパスリーダーを務める組織革新研究会には毎月約100人の平均年齢43歳の企業人が集まるのだが、その事象はここに色濃 く現れ出ている。
この著は、人びとの「人間力」をフリーズさせているものの正体を明らかにし、それをいかに解凍し、引き出していくかについての法則性を追求するものである。全ては、厳しい実践状況の中で発見され、裏付けられてきたものである。
2012年の暮れに発刊され、すぐさま重版された拙著がわずか2年半近くにして必携版への〝衣替え〟とは、著者としては嬉 しいかぎりだ。
2015年4月
著者 藤田英夫
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